本日ご紹介する一冊は、たらちねジョンさんの「海が走るエンドロール」です。
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海が走るエンドロール 1 (ボニータ・コミックス) [ たらちねジョン ] 価格:660円 |
この作品はノーマークで、まったく知らなかったのですが、ツイッターで一話分だけ紹介されていて、読んですぐに注文しました。
それにもかかわらず、手に入れるまでずいぶん待たされてしまいました。
出版する側も、この作品が受け入れられるかどうか自信がなかったのかなと感じました。
ようやく手に入れて読んだところ、紹介されていた第一話で考えていた以上にのめりこめました。
65歳で夫に先立たれたうみ子さんという女性が、買い物に出かけた先で会った友人の気遣いになじめず、逃れる言い訳のために映画館に入ります。
そこで出会った海くんという若者に壊れたビデオの修理を頼みますが、そこでこれまでの生涯で思ってもみなかった指摘をされます。
「うみこさんさぁ 映画作りたい側なんじゃないの?」
(足が 持ってかれる)
「今からだって死ぬ気で 映画作ったほうがいいよ」
海くんの忘れた筆箱を持って、日常が揺らぐと感じながら美大を訪れ、そこで自分ができるということに気づいて、前に向かって歩き出します。
海くんの作る映像もとてもらしくて嘘っぽくないのもいいです。
海くんの闇や、世間体を気にしてしまううみ子さんの後悔などを抱えながらも、たどたどしく進み始める人たちが愛おしくてなりません。
「老後の趣味って言ってましたよね
後悔しないんですか
それとも うみ子さんはもう時間が少ないから
あきらめるんですか」
そう言って問いつめている海くんのほうが涙を流して、
海くんに嘘をつきたくないと感じているうみ子さんの、
「誰でも 船は出せる
私はあの日
目の前に海があることに気付いた」
「…とっても ゾクゾクした」
続巻が楽しみです。
自分はものを作りたい人間なのかどうか、迷っている人はぜひ読んでみてください。
その答えの出し方の一つは確実にわかります。
歳をとっても新しい世界に進んでいこうとする人たちのお話が、最近目に留まります。
「メタモルフォーゼの縁側」はクリエイターまではいかないけれど、歳をとった人が高校生と出会って新しい世界に進んでいく話です。
こちらも読後感がとてもさわやかで、おすすめです。
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メタモルフォーゼの縁側(1)【電子書籍】[ 鶴谷 香央理 ] 価格:858円 |