今週のお題「住みたい場所」
最近、住みたい場所について考えることが多くなっています。
奥さんともいろいろ話をしています。
「私は親の仕事の都合でいろいろなところを回ってきているから、そこでまた半年以上暮らしてみたいんだよね」
「わたしはずっと一ヶ所で暮らしていたから、それは楽しそうだね。でも、わたしは住んでいたところに戻って住みたいとは思わないなあ」
「そうなんだ。長いこと住んでいたからなのかな」
「住んでいたところに、また住んでみたいのはどうして?」
「ああ、あなたにも私の経験した季節を感じてもらいたくて。数日じゃ、何もわからないけど、何か月も過ごせば、そこでしか感じられないものが感じられるから」
好きなところに住むのは難しいと考えがちですが、本当に住みたいと思えば方策はいくらでも出てきます。
住んでいたことがあって、また住みたい場所
新潟県魚沼地方
小学校後半から高校生まで住んでいたので、いちばん思い出の多い場所です。
何といっても冬の雪が記憶に残っています。
毎年2メートルから4メートルの雪が積もり、2週間に一回は屋根の雪下ろしをし、融雪路で湯気をあげながら水の流れる道を歩き、氷点下の朝は、運が良ければ積もった雪の表面が凍って、広がる田んぼの上をどこまでも雪渡りして歩いてゆくことができます。
雪の降っている夜に勉強していると、外の音がすべて消えて、世界中で自分しかいないような気分になれます。
家の周りは雪囲いで囲まれ、その外は雪下ろしで下ろした2階まで届く雪の層です。
外界の音は遠く、ほとんど聞こえません。
1年のうち3ヶ月以上、そのような異界に暮らすことができるのです。
春は雪解けと山菜、夏は昼間はセミの声、夜はカエルの声で耳鳴りするほどになり、秋は木の実にキノコ、紅葉に包まれて、どの季節も楽しくてたまりません。
でも、歳を取ると雪下ろしがきついので、住むのは大変そうです。
奥さんと1~2年くらい住んでみたいのですが。
宮城県仙台市
大学時代を過ごした街です。
24時間365日、自分の考えるとおりに使える体験は初めてで、初めは恐る恐る、コツをつかんでからは最大限に使えるようになりました。
やるべきことを自分で仕分けして、やりたいことを織り込んで、本当に自由で創造的な時間を過ごすことができた時代です。
自分の人と違う部分を受け入れてくれる友人や、それぞれのやりたいことを進めていく姿は面白く、また参考になり、私の生き方の大部分はこの時期に出来上がりました。
「どうしてそんなに前向きなの?」
「どうしたらそんなにポジティブに生きられるの?」
といろいろな人に聞かれますが、ベースはこの時代にできて、面倒そうなことやきつそうなことでも、とりあえず取り組もうという思想で、どんどん積み上がった結果がスーパーポジティブ思想です。
友人も街も暮らしも、この時の楽しさは忘れることができません。
奥さんと出会ったのもこの時代です。
またここに住んで、夜や早朝の街を目的もなく歩き回ってみたいです。
住んでみたいとあこがれている場所
岩手県遠野市
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奥さんの実家から行ける距離だったので、何度も訪れましたが、何度行ってもあの空気感が忘れられません。
1~2年くらい住んでみたい町です。
観光地ではないところを歩いているだけで、いろいろなものが触れてくる気がします。
高速道路が通じてしまって、少しずつあの空気感が薄れてしまってきているのが気になります。
便利になるのはいいことなんでしょうが、失われるものもあります。
夏休みに行われる遠野の夢花火では、子どもたちと河原でシートの上に寝転がって、目の前の空にドオンと地面が揺れるような音を立てて広がる花火を見たものです。
花火が終わって、帰るころになると土砂降りになることもあり、
「きょうは早池峰山の女神さまの機嫌がよくないねえ」
などと話しながら夜の山道を走ったこともあります。
ここで暮らしたら、ふと何かにどこかに連れていかれてしまうような気がして、少し怖く、少しわくわくしてしまいます。
北海道小樽市
車で北海道を一周した時に、北海道にはまた何度も来たいと思いましたが、その時以来訪れる機会がありません。
最寄りのスーパーまで25kmなどという看板が普通にあって、本州とのスケールの違いを感じてしまいます。
小樽はただ街中を歩き回っただけなのですが、どこもかしこもロマンチックで、ここに住んだらどんな毎日を過ごせるようになるんだろうと思いました。
とても端正な貌を見せながら、海の幸をはじめとする食べ物のおいしさに胃袋もつかまれてしまいました。
また小樽のうに丼が食べたくてなりません。
福島県相馬市
仙台から関東の実家に帰るときに、何度も夜の森や相馬などの海沿いの道を通って帰りました。
奥さんの実家の岩手から帰るときも、海沿いの道を通って、ところどころで子どもたちと浜に降りて遊んだりしました。
いつかこのあたりに住んでみたいと思っていたのですが、もうたぶん難しいでしょう。
常磐自動車道が仙台まで開通した時に、夜に通ってみたのですが、道路わきにベクレル数を示す電光掲示板が並んでいて、ここに暮らすのは無理だろうと思いしりました。
いつでも訪れてみたい異国
ほかにも、京都や石川、青森や島根など、暮らしてみたい街はたくさんあります。
仕事で上海やシンガポールに行った時も、自由時間になると街を歩き回っていました。
住んだらどんなふうだろうと思いながら、観光客の来ないようなところを選んで空気を味わいました。
住んでみたかった香港もずいぶんと様子を変えてしまったようです。
ロンドンやパリ、ロシアにも行ってみたいのですが、私の残り時間はそちらまで足を伸ばすことに使うのは難しそうです。
これから私が向かうのは、現実から少しだけずれた、私の親しんでいる街です。
ここの住人たちは、私が彼らの姿を表すのを待っています。
できるだけ多くの時間を、私の大事な世界の人たちを紹介することに費やしていくのが、私のこれからのお仕事です。