JP Road mirage - Sumomo Toxin / すもも毒素

現在波乱の真っ只中です。そんな中で実際にしたこと、感じたことを書いていきます。これが誰かの助けになればうれしいです。

現実と非現実が混ざり合う怖さ -怪談徒然草、里山奇談、遠野物語

今週のお題「怖い話」

お題「我が家の本棚」

今回は怖いお話ということで、リアルとフィクションのあわいにあるお話をご紹介します。

加門七海さんの「怪談徒然草」、

COCOさん、日高トモキチさん、玉川数さんの「里山奇談」シリーズ、

柳田国男さんの「遠野物語」をご紹介します。

どの作品も、日常と非日常が混ざり合って、日々の営みの間にふと思い出してしまうようなお話ばかりです。

「怪談徒然草

 

怪談徒然草

怪談徒然草

 

加門七海さんの書くリアル怪談話はとにかく怖いです。

うわさの神仏シリーズなんかはとてもおもしろくて何度も読み返してしまうのですが、リアル怪談シリーズが怖くて、何度も読み返してしまうんですね。あれっ? どちらも読み返してる? まあ、そういうことです。

 

これは対談したものを筆記して書かれた形になっています。

だから、人に怪談話を語られているように感じて、より怖いのかもしれません。

 

怖かったのは、ざっと見直してみて4篇でした。

あの橋を渡って …白い山が怖い。この経験、私もしたことがある気がするのです。

狐が棲む …キツネが好き。

絶世の美女の正体 …猫が好き。美女が猫だというわけではありません。

振り向いてはいけない …子どもの話は何度見ても鳥肌が立ってしまいます。

 

もちろん、ほかの話も怖いんです。全部怖い話で、読んでいくにつれ、どんどん怖さが増していきます。

とくに最後の1篇は名前を出してもいけない気がするので、ここでは挙げません。読んでもらえばわかると思います。

 

読んでるうちにだんだん怖さがインフレーションを起こして、これは大したことはないと思うようになりますが、それ単体で読むと十分に怖いのです。

出張前とか旅行前、心が弱っている時は読まないことをお勧めしますが、なぜか心が弱っている時ほど怖い話って読みたくなるんですよね…

 

うわさの神仏 日本闇世界めぐり (集英社文庫)

うわさの神仏 日本闇世界めぐり (集英社文庫)

  • 作者:加門 七海
  • 発売日: 2001/06/20
  • メディア: 文庫
 
うわさの神仏 其ノ三 江戸TOKYO陰陽百景 (集英社文庫)
 
うわさの神仏 其ノ二 あやし紀行 (集英社文庫)

うわさの神仏 其ノ二 あやし紀行 (集英社文庫)

  • 作者:加門 七海
  • 発売日: 2002/08/20
  • メディア: 文庫
 

あまりに怖くなったら、こちらを読むと少しは中和されるかもしれません。

里山奇談」 

これは前にもご紹介しました。

何度読み返しても面白い本です。 

www.nigemizu.com

描いている人たちは、それぞれが根の深い「生き物屋」で、休日になると買い物やスイーツを食べに出かけるより、得物(捕虫網やカメラ)を持って山の中に分け入るのが好きな方たちです。

そんな人たちなので、ふと人間の暮らしている世界と、山の中で人が入りこんではいけないところの境界をうっかり踏み越えてしまうことがあります。

その経験がほぼそのままだったり、差支えのない程度に脚色をして描かれています。

人間とつきあうより昆虫や爬虫類、両生類と顔を合わせる方がうれしい人たちなので、あちら側のモノたちにもちゃんと敬意をもって接します。

そのため、 帰ってこられないようなことなく、きょうもきょうとて山に分け入っていくのです。

 

皆さん、ツイッターで発信しているので、それをフォローすると、リアルタイムの普通の人とちょっと違ったお話を聞くことができます。

読むと本当に怖い「遠野物語」 

遠野物語

遠野物語

 

名前はけっこう知られているのに、実際に通して読んだことのある人は少ない本の一つですが、それほどページ数が多いわけではないので、ぜひ読んでみてください。青空図書館などで無料で読むことができます。

遠野物語には、遠野に伝わっている昔話が多く取り上げられていますが、特に面白いのはそれ以外の、収集された時期よりそう古くない時に起きたことが描かれているところです。

まだ存命の人間が経験した不思議や、理不尽な出来事などが淡々と、むかし話に交じって綴られています。不思議なことや怪異は昔々の話ではなく、意外と身近で起こっていることを伝えてくれます。

おそらく、現代の私たちの行動も、未来の人たちにとってみれば理不尽で野蛮なことに思われるのかもしれません。

 

遠野には奥さんの実家に近いので、何度も訪れましたが、やはり普通の街とは違った雰囲気が感じられます。

初めて訪れたのはゴールデンウィークの時でした。盛岡方面から一般道を走って、峠を越えて曲がった先、視界が突然開けたその目の前に、たくさんの桜が満開になっていました。

桃源郷だ…」

桃ではなく桜の花ですが、そこは確かに何かに祝福された地に見えました。

その時に私は遠野に魅入られて、奥さんの実家に行くたびに、遠野を訪れることになります。

 

お盆の終わり近く、8月15日くらいに遠野夢花火という花火大会があります。

拡げたブルーシートに寝転んで、空いっぱいに広がる花火を、何度も子どもたちと味わいました。

 

それでも、ここ15年くらいでずいぶん今様になってきてしまいました。遠野まで高速道路ができたので、さらに俗化が進んでいくかもしれません。

地元の人にとってみれば利便性が上がって、多くの人に訪れてもらえるようになるので、望ましい変化なのかもしれませんが、どこにでもある地方都市の一つになっていくのは何とか避けてほしいものです。

 

この物語は遠野が舞台になっていますが、かつては日本中の村でこのようなお話は普通に語られていました。口承文化なので、柳田国男によって記録された遠野の物語が残っているのです。

町の図書館などには、遠野物語と同じようにそこで暮らしていた人たちの語るお話をまとめたものも置いてある場合があります。

そのようなものが民俗学者によってまとめられ、世に出ることはほとんどありません。

遠野物語は、そのような意味でとても貴重なのです。

 

水木しげるさんも遠野物語の大ファンで、とても忠実にマンガ化されています。

こちらも入り込みやすく、楽しめます。