ついに最終巻となってしまった、とよ田みのるさんの「金剛寺さんは面倒臭い」は最後までとんでもない作品でした。
正論を正論として押し進めた場合に、どこまで行ってしまうのか。
いろいろ考えるとネガティブな考えになりがちですが、金剛寺さんたちはこれをすべて吹き飛ばしてくれます。
前巻で、とよ田さんは「6巻が実質的な最終巻で、次の巻はすべて蛇足です」と仰っていたのですが、確かにその通りでした。まあ、6巻も半分以上蛇足が暴れる話だった気もしますが。
蛇足と言いますが、7巻全体は「めでたしめでたし。そして二人は末永く幸せに暮らしました」のあとに、二人はどんな風に幸せになって、どんな風に暮らしていったのかを克明に表してくれるお話です。
ここまできっちりと見せてくれるお話はそうそうないでしょう。
なぜなら、しあわせになってからのお話は、はたから見ると退屈に感じられるケースが多いからです。
しかし金剛寺さんたちは、暮らしていく時間すべてを本当に幸せに、強く、楽しんで、前向きに生きていきます。
幸福の絶頂が次から次へと襲い来て、常に前よりも高い幸福がかぶさってくるというポジティブさ。
クレッシェンドに次ぐクレッシェンド。どこまで高まっていくかわからない幸福。
そんな世界が確かにあると信じさせてくれるこのお話は、心の中に深く沁み込んできます。
挙句の果てに、このお話のテーマまで高らかに告げてくれます。やっちゃあかんでしょ、創作物でそれは。
でもいいんです、このお話では。
このお話を読み終えて、私は高らかに叫びます。
「このお話を読めて、最高に幸せッ!!」
不確定な世界、正しいと思えない世界に疲れている人はぜひこれを読んで、正しい立脚点を自己の中に作ってください。
絶対に幸せになれます。
「これ、本当に好きだわ」と私の奥さんは言いました。
理不尽な夫に悩まされている彼女の、心の声が漏れ出たようで戦慄しました。
奥さんも私も「今が一番幸せだね」と言い合っています。
私も、このお話は大好きです。