17巻が出たばかりの、オダトモヒト「古見さんは、コミュ症です。」は、これまでのお話から大きく動いた、とても内容にボリュームのある巻でした。
「古見さんは、コミュ症です。」のお話は、美人で何でもできる古見硝子(こみしょうこ)さんが、実はコミュニケーションが極度に苦手で、普通に人と話すこともできないというところから始まります。
もう一人の主人公の只野仁人(ただのひとひと)くんは、とても普通のただの人です。
人から軽く扱われることの多い只野くんは、人をよく見ていて、古見さんがコミュニケーションが苦手であることに気づいて、古見さんの目標である「友達100人作ること」を手伝うことになります。
主役二人の名前でも想像がつくと思いますが、登場人物の名前は家族合わせのようで、名前を見るだけでその人となりが概ねわかる仕組みになっているのも読む人にやさしいです。
只野くんの幼馴染のコミュ力の異常に高い長名なじみ(おさななじみ)さんや、只野くんの妹で、人の懐に入る力がすごい只野瞳(ただのひとみ)さんなどがレギュラー陣でがんばっています。
古見さんのコミュ症レベルが知っている人とでも会話をすることができないというものなので、友達を作るどころか相手とコミュニケーションをとることができません。それでも少しずつ、語り合える仲間が増えていきます。
17巻では、古見さんと古見さんを巡る人たちが大きく変わります。ヤマンバギャルの万場木留美子(まんばぎるみこ)さんとの関係が友達からさらに深いものに変わるのは、ここまで只野くんに支えられてがんばってきた古見さんの一つの到達点でしょう。
読みながら何度も噴き出してしまい、不審そうな目を向ける奥さんに、勧めて読んでもらって感想を言い合いました。
「大丈夫ですか?」
「行ってください」
「ずるいよ……」「はい」
「嘘を、つかないでください」
「留美子ちゃんと、只野くんの、話をしてるんです」
「ぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐるぐる」
「多少うまい土。みたいな」
上のはぜんぶ、お話の中のセリフです。読んでいただければ、このセリフの面白さがわかっていただけると思います。
古見さんは、この巻で1巻から16巻までのセリフをぜんぶ足したより多く喋っています。この巻は本当に特別な巻だと思います。
このお話のすごいところは、出てくる人たちの中に芯からイヤな人が一人もいないことです。マウントしたい欲や悪意のようなものは、隠しても出てしまうものです。作者が人を温かい目で見ているからこんなお話になるのだと思います。
登場人物たちが幸せになっていってくれることを心から願ってしまいます。
少年サンデーの紹介ページもありますので、こちらを見ていただいてもイメージは伝わるかもしれません。