ミニマリズムを始めて、これまで捨てられないと思っていたものが意外にどんどん捨てられるということに驚いています。
自分の着ていた服も、書類も、子どもの学校の教材や作品なども捨てられるのです。写真やビデオはまだ難しいですが、これも何とかなりそうな気がしています。
しかしいろいろ考えてみると、これは自分がミニマリズムに目覚めたということではなさそうです。
捨てられるものの量は、これから自分ができると思うことによって変わる
保管していたものを捨てるというのは、そのものの持つ可能性を捨てるということです。
不要なものを捨てるという考え方は正しいのですが、客観的に見て不要と思えるものを捨てられないのは、そのものの持っている可能性を考えるからです。
若い時や野心がある時代には、その時には不要なものでも捨てることができません。なぜなら、その時は不要なものに含まれている可能性を将来自分が活かすことができると考えるからです。
ミニマリズムのよい点と悪い点
ミニマリズムの考え方は、 自分が今この瞬間にやりたいことに、自分の持つ全リソースを集中して結果を出そうということです。
- 自分が今やりたいことは何かを決める
- それ以外のものに関連するものを除去する…それ以外のものは、今やろうとしていることに対して雑音になってパフォーマンスを下げるため
- ほかに選択肢のない状態で集中してやりたいことを実現する
ミニマリズムの目標はこうなっています。このやり方の良い点と悪い点は何でしょうか。
ミニマリズムの良い点
ミニマリズムの良い点は、自分の設定した目標に集中するため、達成までの効率が高いところです。
野球のイチローさんや将棋の藤井さんなども一点突破のミニマリストです。
たとえばイチローさんが野球をやりたいけれど、ほかの仕事ができる可能性も残しておこうと思ったら、野球界で成し遂げたことを今のレベルでできていたでしょうか。ひょっとしたら野球以外の世界に行くことになったかもしれません。
ミニマリズムの悪い点
ミニマリズムは、ほかの可能性をすべて否定して一つのことに集中するので、ほかにあったかもしれない可能性をすべて消してしまいます。
集中した一つの目標で成功できなかった場合、かなり人生ハードモードになります。ほかの何かを始めようとしても、何周遅れかで始めることになるので、同じことをしている同年代の人に追いつくのは大変です。
下手をすると、いくつかの道を進むことを強制しなかった親や指導者を恨んで、残りの人生をずっとネガティブな思考で暮らすことになるかもしれません。
ミニマリズムがいちばん活きるやり方
ミニマリズムを活かせるのは、自分の目標をたった一つに絞れる場合です。
ふつうの人はなかなか目標を一つに絞るなんて怖い判断をすることはできません。
中学生や高校生に、進学や就職にあたって将来やりたいことを訊くのが定番ですが、答えが出せるわけがありません。大学生になっても、社会人になっても、多くの人は自分の進路について漠然とした不安を持ちながら、自分のできる仕事をしているケースも多いでしょう。
ミニマリズムを活かせるのは、一つに絞ることができた場合です。
一つのことのほかに何もできない
映画「愛と青春の旅立ち」の中で、しごかれまくったメイヨがフォーリー軍曹に言ったセリフの「私には他に行く場所がないのであります! 私にはここしかないのであります! 私には何もないのであります!」が吐けるようなら、いけるでしょう。
どうしてもやりたいことがあり、それが失敗した結果もすべて受け入れられる
水島新司さんのマンガ「男どアホウ甲子園」の主人公の藤村甲子園のように、ひたすら自分のやりたいことをやりまくって、プロ3年目で肩を壊して引退し、その後甲子園球場のグラウンド整備担当となって暮らすというのも一つの気持ちいい形だと思います(「大甲子園」でそのくだりが書かれます)。
多くのことが望めなくなってきたとき
会社を退職するような年齢になると、そこから先に自分のできること、やりたいことが限られてきます。この立場になれば、ミニマリズムは活きてきます。
これまでため込んできた可能性の多くは処分してもよくなってしまうので、ガンガン捨てられます。
私は今まさにこの立場なのですが、確かに10年前なら絶対に捨てられなかったものがどんどん捨てられています。
できることが限られるという、少し寂しい追い風ですが、時間を有効に使っていくためにもこれは利用した方が随分とマシです。
子育て中のカオスの源(みなもと)
自分のことなら目標を絞ることもそれで失敗した時の責任も引き受けることができるでしょうが、他人の人生に対してそれをしなければならない人間関係が 一つだけあります。
親子関係です。
子どもの人生に対する親の助言や指導はどうやってもいずれ後悔につながります。
子どもの特性を正しく理解するなんてことは出来はしません。自分のことさえわからないまま、いまだに後悔しているような人間ができるわけがありません。
自分の人生が自分の思い通りで、どの角度から見ても間違いなしなのであれば、子どもに自分の人生と同じ道を選ばせるのもいいと思いますが、子どもの特性が自分と同じとは限らないので、失敗してしまう可能性もあるでしょう。
では本人に選ばせるかという話になりますが、中学生や高校生に将来やりたいことを尋ねても、答えが出せるわけがありません。
それが判断できるほどの知識も経験もない状態でする判断が正しい可能性はほぼないでしょう。
そのため、親は子どもの持っているかもしれない可能性のために、たくさんのモノを持ち続けなければならなくなるのです。
ここで無理にミニマリズムで可能性を閉ざしてしまうと、子どもの将来への道が狭くなってしまうので、注意しなければなりません。
子どもが独り立ちするまでは、子どものものを捨てまくるのは待った方がいいでしょう。