今回は最新の4巻が4月22日に出たばかりの、白川紺子さんの「後宮の烏」をご紹介します。
華やかな皇帝の妃たちの中で、一人黒衣に包まれた烏妃(うひ)は、後宮に在りながら皇帝の妃ではなく、不可侵の存在としてひっそりと暮らしています。
不幸な生い立ちと隠された幾重もの秘密の中で、孤独を維持しなければならないさだめから、少しずつずれていってしまいます。
むしろ望ましい方向のように思えるのですが、烏の姫は古くからの運命に縛られており、さらに昏い未来を見てしまいます。
表情筋の死んだ皇帝と、美しいながらもさまざまな思惑を秘めた宦官たちと、ほかの皇帝の妃たちとともにさまざまな出来事に会い、それでも自らの運命を自分で切り開こうとします。
不思議な技を使う時に烏妃が顕現させる薄紅の牡丹に、漆黒の衣をまとった禁断の妃。
読むほどに形を持ってくる美しい幻のような景色を脳裏に顕わしながら、綴られた文字を追い続けるのは快感です。
中華ベースの幻想小説の中にはがっかりするものもありますが、このお話はとても気に入っています。
出てくる人たちがみんな幸せになってほしいと思いながら、続きを心待ちにしています。