酒見賢一さんの「後宮小説」はとてもおもしろい小説なのですが、それをアニメ化した「雲のように風のように」のブルーレイディスクが来年1月に発売されます。
「雲のように風のように」Blu-rayが2021年1月20日発売、セル画使用した特典も(動画あり)https://t.co/r9QBByRp5s pic.twitter.com/xzGtVAE3ma
— コミックナタリー (@comic_natalie) 2020年11月20日
1990年、第2次アニメブームの時に、日本テレビで放映されたアニメです。
ブームに当てこんだお金稼ぎアニメだろうと思いましたが、放映中にいっさいCMを入れないという謳い文句が本気っぽいと感じ、見てしまいました。
それほど見る気になれなかったのは、お話のあらすじでした。
ざっというと田舎のぽっと出の娘が後宮に入宮して、ついには皇帝の正妃となるという、ハーレクインロマンスやレディースコミックもかくやというストーリーです。
最初は他のことをしながら、横目でふんふん言いながら見ていたのですが、だんだん引き込まれていき、ラストは目からあふれる液体を持て余しながら、最後までしっかり見てしまいました。
個性的なお妃候補たちの掛け合いや、関わってくる人たちとの縁の結び合いがとても稠密に織り込まれて、主人公だけでなく、登場人物すべてにシンパシーを感じてしまい、それぞれの先行きの情報が過多でオーバフローし、そのために液体が目の位置まで上がってきてしまったものだと思われます。
主人公の銀河は最後まで彼女らしく強く前向きであり、お妃候補たちも後宮のメンバーも、自分の得意分野で最後まで活躍します。
反乱軍の将軍のイリューダと、後宮を開放するために昔なじみの銀河に協力した反乱軍の参謀混沌の掛け合いもすてきでした。
唯一、皇帝の撃たれ弱さが不満で、銀河の「そんなつもりで渡したんじゃない」という叫びが悲痛です。
基本的に悲劇でありながら、後宮を去った銀河たちは、それでも前向きに生き抜いていき、後味は悪くありませんでした。
このお話がとても気になったので、原作の「後宮小説」を捜して読みました。
この売ることを考えていない愛想のないタイトルの小説は、造り込まれた細部とキャラクター造形で、このルーティンなストーリーの枠組みにありながら、アニメ以上に感動することができました。
今も酒見賢一さんの本は追いかけています。
「語り手の事情」や「分解」のように、なんだかよくわからない実験的なお話もありますが、たいていはおもしろいです。
「墨攻」と「陋巷に在り」はとてもおもしろく、何度も読み返しました。
「泣き虫弱虫諸葛孔明」は、初めのころはすごくおもしろかったのですが、3巻目くらいから史実を追うだけのようになってしまい、少し残念な終わり方でした。
もう一度、あの元気な銀河やゆかいな仲間たちに再会したいと思い、予約してしまいました。
来春が楽しみです。