遊園地にも行けないこの時期に、スティーブン・キングさんの「ジョイランド」をご紹介します。
スティーブン・キングは大好きな作家のひとりですが、ダークタワー・シリーズのあたりから追いかけをやめて、目についた時だけ買ってみるという状態でした。そんな中で買ったのが、このジョイランドです。
これは大当たりでした。
彼女はいるけどお金のない大学生のデヴィン・ジョーンズが、夏休みのバイト先として見つけたのが、地方の遊園地のジョイランドです。
ジョイランドは子どもたちを楽しませたいというオーナーのもとで、健全に運営されているのですが、どこの遊園地にもありがちな怪談話もかかえています。
キング作品らしくホラー方向に進むのかと思ったらそうではなく、多少の不思議を含んだ日々の中で、真面目なアルバイトの学生が感じるいろいろなことが起きて、過ぎていきます。仕事を続けるうちに、なぜ大勢の人間がこの遊園地での仕事を続けているのかを知り、仕事を楽しむすべを理解します。
モラトリアムのような余裕のある時間の中で、知り合った身体の弱い少年のマイクと交流するのですが、彼は不思議な力を持っており、それがデヴィンを絶体絶命の危機から救います。
デヴィンの危機をマイクに伝えた人物を知り、ああ、これこそがキングだ、と感じて、このお話がとても好きになってしまいました。
最近のキングは重くて暗い話が多くて少し離れてしまっていたのですが、このお話は最高です。とても爽やかでなつかしく、そして切ない青春時代の一季を見せてもらいました。
地方の遊園地は、ここ20年くらいでどんどん閉鎖してしまっています。今年はついに豊島園が閉園するというニュースがありました。
今や2強となったメジャー遊園地のために、少しやさしく、地域の人に寄り添ってきた遊園地がなくなっていくのは少し切ないです。
としまえん閉園、8月末から プール以外は段階的に終了:朝日新聞デジタル
地方の遊園地の閉鎖もここまで来たかという思いが強いです。
2020/04/19 21:23