今回はNHKでもアニメ化されて、子どもたちにも大人気の大童澄瞳さんの「映像研には手を出すな!」です。
アニメについて
アニメは湯浅政明監督が監修しており、原作を完全に活かしきった上で、さらに面白さが上乗せされています。EPISODE.08の「大芝浜祭」は珍しくアニメオリジナル要素の強い回でしたが、ロボット研の部長の怪演はさすが湯浅監督です。
アニメを見た時に最初に感じたのは、オープニングのすばらしさです。
主役3人がおかしなポーズをとって見えを切るところから、おもちゃ箱をひっくり返したような要素がたくさんあふれてきて遠ざかっていく様子が、chelmicoの「Easy Breezy」に乗って心を浮き立たせてくれます。
こういうアニメを見て欲しい子どもたちが大喜びで夢中になって、自分たちも最強の世界を描いているのが本当にうれしいです。
NHKなので、再放送もかかると思いますので、機会があったらご覧になってください。
映像研はどんな話なのか
アニメから入った人は、原作の絵がかなりぎごちないので、そのあたりが苦手な人は入りにくいかもしれません。でも読んでいくうちに気にならなくなり、むしろこの絵でないとダメだとなってくると思います。
お話は自分の考える最強の世界を表現したいという高校生と、利害関係を共有する仲間たちとみんなの要求を満たすためにモノづくりをしていく過程を書いています。
金森さんが多くの人に支持されていますが、この人はほか3人のクリエイターと違って、企画を実現する力を持っています。
金森さんだけ表現したいものを持っておらず、過去に知り合いの店がつぶれてしまった経験から、実際に実業を実現して利益を出すことにこだわっています。
クリエイターの中で一人実業家として立つ金森さん
私は当初、金森さんがウケているのは、創作意欲だけあって実現能力のないクリエイター予備軍たちが、作品を作る場を用意してくれ、怠けようとする自分たちの尻を叩き、実際に売り込んで利益化するための方策を考え、実務をこなし、サポートしてくれるものを求めているからだろうと考えました。
漫画家に対する編集者、アニメ作家に対する営業担当などで、宮崎駿ですら鈴木敏夫がいなければ、あれだけの作品群を世間に問うことはできなかったでしょう。クリエーターはおおむね自分のやりたいことしか考えていないので、世間に受け入れてもらえる作品を実現するにはもう一段階必要なのです。
金森さんと同じく、自分たちのいる社会を見通したうえで着地点を見出そうとしている人間がほかにも設定されています。生徒会書記のさかき・ソワンデさんとアニメ研部長の鈴木さんですが、この3人をからませることで作者が何をしようとしているのかが楽しみでなりません。
モノを作る人はこの本を読もう
モノづくりを志す人間はこれを読んでおくと、いつか必ず来る心が折れそうな時に、ゴーストに囁いてくれる言葉を蓄えておくことができます。
異常なほどの表現したい対象へのこだわりこそが、創作意欲を最後まで支えてくれるのです。
恰好をつけてきれいにまとめたり、手を抜いたりしていては、創作の本当の面白さを知ることはできません。バカにされても、ののしられても、これだけは絶対に捨ててはいけません。
それを「映像研に手を出すな!」は哀しいくらいにきれいに教えてくれます。
アニメのBlu-ray Boxはいろいろな意味で手に入れて損はしないと思いますが、限られたお金を有効に使いたければ、NHKの再放送を待つのが得策だと思います。
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