日本のマンガの中で、今私が一番続きを読みたいのが井上雄彦さんの「リアル 」です。
「スラムダンク」は面白かったし、宮本武蔵が好きなので「バガボンド」も楽しみにしています。
バガボンドは身体をどこまでコントロールしていけるか、なぜ人は自分より強いかもしれない相手と戦いたがるのかについて、肌感覚を備えた解決の提案をしてくれているので、次の巻を読むのが怖いくらいです。怖がっているうちに前の巻が出てから6年近く経ってしまいました。もうそろそろ再開してくれてもいいのよ。
「リアル」は身障者バスケがメインの話と聞いて、なかなか手が伸びなかったのですが、読んでみたらそれぞれのキャラクターへの感情移入が強くなりすぎて、現実に知っている人たちのように感じてしまっています。
これが「リアル」というタイトルに象徴されているのでしょうか。
人がなぜ、ある考え方をするようになったのか、何があれば人は変わることができるのか。なかなか答えの出ない問いに対しての井上さんなりの答えを示してくれています。
登場人物ひとりひとり、全員の「これから」を知りたくてたまらず、続刊を心待ちにしています。
そんなリアルな登場人物たちの中で、私が好きでたまらない二人がいます。
1人は野宮朋美。
もう1人は白鳥加州雄。
野宮朋美は高校で居場所を見つけられず、憂さ晴らしに乗ったオートバイで事故を起こし、高校を中退してしまいます。
オートバイに乗せていた女の子が下半身不随になり、絶望的な将来しか見えていない中から、自分なりに誠実にけじめをつけて行こうとする中で、道を見つけていきます。
一度はうまくいきませんでしたが、野宮はぜったいにまた道を見つけられると期待しています。
野宮が活躍するリアル11巻は、もう何十回も読み返しています。
白鳥加州雄は悪役専門のプロレスラーですが、やはりオートバイの事故で下半身が動かなくなっています。
プロレスラーは不可能を可能にする存在だとうそぶいて、自分で不可能に近い目標を作ってがむしゃらに突き進みます。身体は彼が思う通りには回復するものではないんですが、そんなものをものともせず、自分の設定した日にふたたびプロレスラーに戻ります。
私が子どものころあこがれていたプロレスラーは、こういう求心力を持っていました。いろいろと悪く言う人たちはいても、ここまで肯定的に描かれるとやはり自分は間違っていなかったと思えます。
この二人だけでなく、すべてのキャラクターが現実世界と同じように絡み合い、それぞれの思惑で動きながら影響しあい、反響しあって高みに上ろうとしています。
早く、一人一人がたどりつく先を見てみたいのです。
それなのに、いつまで待っても「リアル」の続刊が出てこないのです。
私の中では登場人物たちが早く外に出たくて暴れまくっています。でも、彼らにどんな人生が待っているかを私は知ることができないのです。
そんなストレスをためているうちに、朗報がありました。2019年から連載が再開されたとのことです。誰がどうということはないですが、彼らのその後を早く見たくてたまりません。