今週のお題「そうめん」
私は素麺がそれほど好きではありません。
そば、うどん、ラーメン、パスタ、ビーフンなどが選択肢にあれば、まず間違いなくそちらを選びます。
冷たい麺ならばそばか冷やし中華です。この二つがなかったら、たとえ素麺があったとしても、カツ丼か生姜焼き定職を選びます。
素麺を食べたことがないから素麺が好きではないのかというとそんなことはなく、子どものころは夏といえば食べていた気がします。
味がほとんどない素麺は、食事を楽しむというより、夏になって食べものを受け付けにくくなった胃の中に、食品を送り込むために食べていたように思います。
私は夏の間は主にスイカとトウモロコシで栄養補給をしていたので、素麺はあまり重要な位置づけにありませんでした。
そんなわけで、私の中には素麺愛好ラインが形作られなかったのかもしれません。
それほど素麺の好きでない私が、一回だけ忘れられないほどおいしい素麺を食べた記憶があります。
中学生くらいのころに、家族で自転車でサイクリングをしたことがあります。
お店どころか民家もほとんどない山の中の道をサイクリングしたのですが、その途中で道のわきの少し高くなったところに、木に囲まれたスペースがありました。
そこに4つほどのテーブルが置かれており、くるくる回るだけの流しそうめんの器具が置かれていました。
店のようなものもなく、物置のような小さな小屋があり、そこにいる人が給仕してくれました。
水を張った素麺流しの中に麵が入り、くるくると回ります。
つけあわせに山菜の天ぷらが来て、食べてみたらそれまで味わったことがないほどおいしくて、素麺も追加してもらうほどおいしくいただきました。
その夏、また食べたくてその道に行ってみたのですが、そこだったと思う場所に行ってもテーブルもなく、人けもまったくなくなっていました。
そこで流しそうめんを出していたこともなかったかのような風情で、物置のような小屋だけが残っていました。
あれが何だったのかはわかりませんが、そこで食べた素麺と山菜の天ぷらがおいしかったことだけは、いまだにしっかりと覚えています。
あれ以来、私は食事をとれる所で山菜の天ぷらがあると、必ず注文するようになりました。
いつもおいしいのですが、あの山の中で食べた山菜の天ぷらほどおいしいものには、いまだに巡り会えずにいます。
最後に、あなたが冷たくておいしいと思っている氷の乗った素麺は、そこに出てくる前に真夏の熱気の中で、熱湯をくぐらせて作ってくれている人がいるということは理解しておいて、感謝をささげましょう。
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