大きな流れがあると、必ずその逆の流れを示してくる人がいます。
それが正しければよいのですが、自分の主張を正しそうに見せるために間違った情報を織り込んで、さも世の中の潮流が間違っているように見せるタイプのミスリード情報には注意が必要です。
元国税が暴露。日本人の「生命保険は掛け捨てが得」という大誤解 - まぐまぐニュース!
なぜこういうミスリードはなくならないのだろう
2020/07/20 09:29
20年前から脳みそが更新されていないお父さんの話を聞いているようで、これはこれで楽しめました。
記事の論旨
この記事の論旨は、「生命保険は掛け捨てがいい」という大きな誤解がされており、実際は貯蓄型の保険の方が得であるということです。
この問題に対する理論展開は以下のようになっています。
1.「生命保険は掛け捨てがいい」理論は、以下の考え方に基づく:
- 貯蓄性がある生命保険は、利率が非常に低いので、貯蓄としては意味がない
- 掛け捨ての生命保険に入ると、保障は受けられる上に、保険料が安く抑えられる
- 得する額は年間12万円以上になる
2.これは間違い! なぜならば、税金のこと考えていないから
現在の税制には、「生命保険料控除」がある。
生命保険の掛け金のうち、年間8万円分までの分について、
所得税の所得控除=40,000円→節税分 4,000円
住民税の所得控除=28,000円→節税分 2,800円
(サラリーマンの平均税率は10%)
所得税、住民税合わせて6,800円の節税になる
年間8万円の貯蓄型保険に入って6,800円節税
6,800円を利息と考えれば、8.5%=6,800円÷80,000円
3.掛け捨ての生命保険の控除額
掛け捨ての生命保険だと、3,000円×12月=36,000円
所得税の所得控除=28,000円→節税分 2,800円
住民税の所得控除=23,000円→節税分 2,300円
(サラリーマンの平均税率は10%)
所得税、住民税合わせて5,100円の節税になる
4.従って、貯蓄型と掛け捨て型の差は1,700円=6,800円-5,100円
生命保険料控除が1,700円高いということは、
年間12万円貯蓄型保険をかけた時に利子として1,700円もらえるのと同じ。
つまり年利1.7%!
定期預金でも1.7%の金利などつかない。だから貯蓄型生命保険の方がお得!
答え合わせ
貯蓄型保険と掛け捨て型保険の控除額の差は、1,700円
貯蓄型保険と掛け捨て型保険の保険料の差は、116,400円=120,000円-36,000円
(貯蓄型保険の最低線は月10,000円)
差額分の年利は、1.5%弱=1,700円÷116,400円 になります。
この差額分を銀行に預ければ、確かに貯蓄型保険の方がお得に見えますが、貯蓄型保険を掛け捨て型保険に切り替えようとしている金融リテラシーの高い人は、銀行に預けるはずもありません。
現在は国がNISAという制度で、非課税投資枠が設けられています。
掛け捨てにした差額分12万円弱をNISAに回せば、2%~5%は平均的に出ます。
コロナ騒ぎで現在は落ち込んでいますが、10年以上の長期に渡って預ければ、上の利率は得られる可能性が高いです。
さらに複利で運用すれば、10年後、20年後には大きな利益が出ます。
運用から運用コストを差し引いている貯蓄型保険では、同じ利益は出せません。
まとめ
『「生命保険は掛け捨てが得」という大誤解』を書いた人が、本気でこう考えているのなら、この人は新しい情報を取得せず、20年前の常識のままで物事を考えているので、この人の考え方は参考に値しません。
もし誰かのために無理やりこんな情報を捏造しているのなら、こんな情報を聞くこと自体がマイナスです。
国がNISAという枠を設けて国民の投資に対する意識を高めようとしている時に、元国税局の職員がこのレベルでは、日本の財政金融が世界の潮流から置いていかれているのも理解できる気がします。
世の中には、人をだまそうとしている人だけではなく、このように理解が浅くて間違った情報を流してしまう人がいます。
情報の取捨選択は、これまでよりはるかに大きな影響をあなたの人生に及ぼします。
情報リテラシーを向上させて、ウソ情報に騙されない力をつけましょう。
「そうは言っても、金融って難しいよ」という方のために、YouTubeの番組をご紹介します。私が見ている限り、ウソやだましのない情報ばかりを発信している番組ですので、参考にしてみてください。
もちろん、もろ手を挙げて信じる必要はありません。貴女の情報リテラシーを向上させるための一つの手段として、疑いながら見てみるとよいでしょう。
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