きょうは出会えてよかったマンガの一冊である、三島芳治さんの「児玉まりあ文学集成」を紹介します。
このお話は、文学部部長の児玉まりあさんと、入部希望者の笛田くんのほぼ二人だけの舞台でお話は進みます。
文学部には、部長の児玉さんしかいません。
笛田くんは何度も入部試験を受けていますが、なかなか合格することができません。
児玉さんと笛田くんは何度も入部試験を繰り返します。
児玉さんは文学の力を語り、笛田くんは何とかそれをマスターしようとしています。
その間に巻き込まれる文学少女と理系少女の熱いデュエルも捨てがたいし、自分の使う語尾を変えてしまったことで知性を失った少女の話も面白い。
高度な言葉遊びは世界をよりいっそう単純な形に複雑化します。
「それほどとは」と笛田くんは言います。
笛田君はすっかり児玉さんに支配されているように見えていたのですが、実は支配されているのは児玉さんなのかもしれません。
そんな不思議なキーワードがそこここにちりばめられています。
児玉さんと一緒にいたい笛田くんの強い磁界に対抗するため、きょうも児玉さんは文学の強い言葉で自分を守ると同時に、笛田くんをシェヘラザードのように自分の世界の中に閉じ込めようとします。
性よりももっと強いつながりを造れる時代の少年少女の神話を見せられているのだと思います。
奥さんとつきあい始める前の、下世話でありながら神聖で、何もわからないのにすべてわかっていた時間のことを思い出して、なつかしくなりました。