JP Road mirage - Sumomo Toxin / すもも毒素

現在波乱の真っ只中です。そんな中で実際にしたこと、感じたことを書いていきます。これが誰かの助けになればうれしいです。

不気味で、不快で、忘れられないロマンチック 「VRおじさんの初恋」暴力とも子

お題「我が家の本棚」

ネットで紹介されていたのですが、設定を見てなんだかなーと思いながら読んでみたら、先が気になってしょうがなくなり、すぐに購入してしまった暴力とも子さんの「VRおじさんの初恋」をご紹介します。

 

サービス終了が決まったネットゲームで、美少女のアバターをかぶったおじさん二人が出会うという、パワーワードに満ち溢れて、何ならはみ出している感のある物語です。 

際物に触れるつもりで、そっと世界に入り込んでみたのですが、意外なほどに拒否反応なく世界に入り込めてしまいました。

おじさんのビジュアルは、ここまでやらなくてもというくらいにリアルなおじさんで、生理的な不快感はチリチリ感じるのですが、それを上回ってひきつけてくる物語の展開に、もっと先を読み進めたくなってしまいます。

 

消えようとしている世界を静かに見届けようとしている主人公のところに操作もおぼつかない露出過多のキャラクターが近づいてきます。

 

消えようとしている世界の中で、関係をつなぎとめるために何をすればいいかもわからず、現実と同じように接触しようとしたり、話をしたりしてコミュニケーションをとっていきます。

そしてゆっくりと構築される関係は現実と変わらないように見えてきます。

ここから先の展開は暴力的で、圧倒的です。

 

仮想世界の中の「世界の終わり」は、ポジティブなフィードバックを現実世界に返し、その結果を見て、思わず涙腺が緩んでしまうのを感じて狼狽してしまいました。

仮想世界の話なのに。

それ以前に作り事なのに。

現実を揺り動かしてくれるこんなお話を作ってくれた作者さんは普通ではありません。

 

いくつになっても、あなたが誰でも、初恋は確かに訪れる機会を待っていて、いきなりすべてを奪っていってしまいます。

これほど楽しくて、元気が出て、哀しいことはありません。

 

途中でくじけそうになる人も多いと思いますが、どうか最後まで読んでください。

人とかかわることは、人にとっていちばん心揺らがされるものだということを感じ取ることができるかもしれません。