エセ科学が巷に跋扈して、人々をだまして不幸にすることの多い昨今、エセ科学に正しく向き合うための指南書ともなる本が、あさりよしとおさんの「HAL」です。
あさりよしとおさんといえば、「ワッハマン」や「るくるく」など、許す心が強くないと難しいマンガをたくさん描いていますが、「夏のロケット」のようなとても抒情的な漫画も描いています。
「ワッハマン」も最終巻を読んだ時には思わずうるっときてしまいましたし、「るくるく」も何とも言えない喪失感と、切ない読後感がありました。
学研の科学を読んでいた人なら、マンガサイエンスという科学マンガで遭遇しておられるかもしれません。
いろいろとこじらせて、ひねくれたあさりよしとおさんが、科学について純粋に考察するマンガが「HAL」です。
|
生命の誕生から量子力学の波動方程式の誕生の元となったシュレディンガーの猫、ドップラー効果や、ここでは取り上げることもできない、大きな声で言えないような科学の真実が語られています。
真実とうそが巧みに織り交ぜられていて、「えーと、どちらが本当なんだっけ」と考えてしまうような構成は、エセ科学に対峙するときの正しい姿勢を身につけさせてくれます。
いや、本当に「HAL」にうそはほとんどありません。
ただ、真実を少しだけずらして語るエセ科学の理論が使われており、それがよくわかるように見せてくれるのです。
グダグダのストーリーを追ううちに、本当のように見えるうそと、うそのように見える真実が見えてきます。
科学的視野を身につけるきっかけとして、とてもよい入門書です。
ラストには、あさりよしとおさんらしい、切ないお別れが待っています。
昨日まで当たり前だったことが日常から消えてしまうような、こんな経験を誰もがしているのではないでしょうか。
「HAL」が裏の科学マンガなら、どこに出しても恥ずかしくない表の科学マンガが学研のマンガサイエンスシリーズです。
|
|
まだ売られているかどうか確認していたら、無料で読めるバージョンがありました。
これであさりよしとおワールドを経験されてみるとよいかもしれません。