今週のお題「鍋」
朝起きると、冬が近いと感じる日が続くようになってきました。
空気が冷たくなるこの季節には、身体の芯から温まる鍋物が食べたくなります。
うちでよく食べる鍋物は、おでんにちゃんこ鍋にキムチ鍋、鴨鍋、もつ鍋、すき焼き、海鮮鍋あたりです。
中でもうれしいのは鴨鍋ともつ鍋です。
カモもモツも、極上の出汁が出るおかげで、最後の一滴までおいしくいただけます。
〆でうどんや雑炊にしても陶酔するほどおいしくなります。
スッポンの鍋もものすごくいい出汁が出て、お腹がいっぱいになってもまだ食べてしまいます。
実は昨日もつ鍋だったので、今も口の中が幸せです。
きょうも汁物代わりにもつ鍋を出してもらい、家の中が幸せな香りになりました。
残りは麺を入れてチャンポンにしてもらって食べる予定です。
今は想像上のしっぽを千切れるほど振りながら、チャンポン待ちの状態です。
おいしいんですよね…
個人的にはすき焼きが一番好きなのですが、狂牛病が問題になってから、うちでは牛肉のすき焼きは出してもらえなくなりました。
豚肉のすき焼きも試してみたのですが、これじゃない感がすごくてリピートには至りませんでした。
すき焼きでいちばん覚えているのが、結婚して間もないころに、灯油ストーブで煮込みながら食べたすき焼きです。
そのころ、すき焼きはほとんど火を通さずに、鍋の汁に軽くくぐらせるだけで食べるといいという話を聞き、そうしてみたら、牛肉がとろけるように口の中で溶け、肉自体の甘さが脳まで達するほどおいしく、それ以来うちのすき焼きはそのスタイルになりました。
作り方は、ベースの牛肉を牛脂で軽く炒めて割り下を入れ、イチョウ切りのダイコンを入れ、少し煮込みます。
次にハクサイ、ねぎ、にんじんを入れ、しいたけを入れて、また煮込んで、具材がくたっとなってきたら、しらたきと焼き豆腐を入れ、最後に春菊を加えて準備完了です。
灯油ストーブは火力が弱いので、とてもうまい具合にくつくつと煮込まれてゆきます。
その状態になった鍋に、薄切りの牛肉をくぐらせて、溶いた生卵につけて食べていきます。
鶏の卵と牛肉がこんなに合うということを、いったい誰が発見したのでしょう。
口の中をとろけさせながら、脳は幸せ物質を大量に垂れ流し、食事をしながらニルヴァーナを予感します。
このまま至福の時間が続いて、食事が終わると当然のごとく食べ過ぎていて、地獄の時間が続きます。
割り下はお酒と醤油と砂糖で甘めに作ってあり、それが沁み込んだダイコンがとてもおいしいです。
うちの奥さんは、「すき焼きにダイコンを入れるなんて聞いたことがない」とおっしゃいますが、この煮込まれたダイコンのおいしさを知らなかったとは気の毒の限りです。
「ほう。それでは君はこのダイコンがおいしくないというのかね」
「おいしいけど、すき焼きではない」
「きょうからこれが君にとってのすき焼きだ。よく覚えておきたまえ」
ということで、うちのすき焼きはダイコンが必須です。
二人で暮らすようになって、我が家なりのすき焼きが作られたこの日、赤く燃える灯油ストーブに載せて食べたその味が、私にとっての最高の鍋料理です。
禁断の料理となってしまったすき焼きですが、子どもが独立して、もう先を考える必要は少ないということで、説得に成功しました。
何か特別のイベントがある時なら、再度提供することは可能であるという合意が得られたので、また味わうことが可能になりそうです。
すき焼きをまた食べることができるようになったのは、これから先の楽しみの一つになります。
ああ、人生って、なんてすばらしいんでしょうか。