今週のお題「いも」
芋というと思い出すのは、もう亡くなった父のことです。
父はとても真面目で、あまり我がままのない質だったのですが、食べ物の好き嫌いだけは生涯直せませんでした。
父がいちばん嫌いだったのは、サトイモでした。
あまり無茶な怒り方をするのを見たことがなかったんですが、母がうっかりサトイモを入れたおかずを父の器に入れて出したら、その器を投げ捨てられたと言っていました。
きらいだと言っているものを調理して、それを間違えてよそって出す母というのも相当な粗忽ものだと思いましたが、投げ捨てるのも相当なものです。
私はどっちもどっちだと思って、内心おかしく思っていました。
喧嘩もよくしていたけれど、本気で憎みあっているわけではないのはわかりました。
とても仲のよい夫婦だったのですが、時々そんな気の抜けるような事実が出てきて、今でも時々思い出して笑ってしまいます。
まじめで、仕事もできて、子どもに対しても厳しかった父が、自分のサトイモに対する好き嫌いだけは直せなかった。
これを知って、私は父に対する尊敬とともに、何とも言えない愛嬌のようなものを感じてしまい、亡き父を想ってしまうのです。
私自身は嫌いなものがほとんどなく、料理されるもので口に入れられないものはまずありません。
この点は奥さんに喜ばれています。
それでも、私は自分が父より優れていると思えることはないのです。