2000年ころに出版されたマンガで、かなり古いのですが、これにはまってしまいました。ここ1ヶ月くらい何度も読み返しています。
けっこう人気が出て、映画化もされたりしたマンガですが、その当時は見ませんでした。こんなに面白いのならもっと早く見ればよかった…
拳銃の不法所持で捕まった花輪さんが、刑務所の中で経験したいろいろな日常を淡々と描いているエッセイマンガです。
普通に暮らしている人が知ることのない刑務所の中の生活は面白いのですが、厳しく統制されていて、あらゆることにルールが設定されています。
そのように厳しくルールの決められた世界の中で、ルールを守って暮らしていく中で、日々の食事や入浴などに生きがいを感じて生きていく姿が妙に魅力的に見えてきます。
トイレをするにもいちいち申請して、認めてもらえないとできないような環境がよいわけはないのですが、読んでいると「こういう時はこうして、これはしてはいけない」などと考えています。
食事がとても細かく描写されていて、細かく描かれた絵にいちいち注釈がつけられていて、そこを丹念に読んで食べたくなっていたりします。
学校などよりはるかに厳しいルールに縛られた世界に、なぜこんなに惹かれてしまうのでしょうか。
ううむ、うまく伝えられている気がしない。
何度も読んでいるうちに、学生時代に好きだったトーマス・マンの「魔の山」を思い出しました。
「魔の山」は、肺病になった主人公がスイスの療養所で療養する日々を描いている小説です。分厚い文庫本2冊組の大作ですが、読み始めるとどんどん引き込まれていきます。
「魔の山」の話を思い出して、少し2つの作品の共通項が見えてきました。
どちらもモラトリアムの世界に強く縛られているのです。
どちらも何かの要因で社会に出て働くことができず、社会の歯車から外れたところで日々を過ごさざるを得ません。無敵の言い訳をもって、社会の脇で何もせずに過ごして行けるんです。
そのあたりに何度も読んでしまう魅力が隠れているのかもしれません。