最近見たというわけではないのだけれど、見ると頭の中のどこかに引っかかる部分のある映画を作る監督が、また一人亡くなりました。
映画監督の大林宣彦さん 肺がんで死去 82歳 | NHKニュース https://t.co/FiVneiu39n
— 香林・劉 (@karinryu) 2020年4月11日
薄暮の中に立っていた怪人がまた一人消えた。
決して好きな監督ではないのですが、何かを作っているのを見かけたら気になり、あとで見てみなければ気が済まなくなる厄介な存在です。私にとって、日本映画、いや世界の映画監督の中でも特別な人でした。
映画の出来はいつもどこか荒く、無理やりな部分も多く、特殊撮影も何でこんな使いかたを? と疑問に感じるところも多く、それでいてものすごく魅力的な映像を造るので、いつもやられたと悔しく感じます。
大林宣彦なんて知らないという方のためのCM作品
昭和40年代ころから、3,000本を超えるCM制作に携わり、それまでのテレビ・コマーシャルとは全く違う映像とセンスでテレビを見る人たちの目を楽しませてくれました。
私が特に記憶に残っているものをいくつか。
チャールズ・ブロンソンの「マンダム」。「うーん、マンダム」の一声で、このころからチャールズ・ブロンソンの映画がいくつも公開されて大ヒットしました。荒野の七人のブロンソンはとても好きです。
ソフィア・ローレンの「ホンダ・ロードパル」。「ラッタッタ!」で手軽で便利なロードパルの特徴がよく出ていました。
リンゴ・スターの「レナウン・シンプルライフ」も忘れられません。
高沢順子のTOTOのホーローバス「お魚になったワ・タ・シ」は流行語になりました。
山口百恵・三浦友和の「グリコアーモンドチョコレート」をみると、大林宣彦が女の子を魅力的に見せる力を感じます。
高峰三枝子・上原謙の「国鉄フルムーン」は新しい価値観をしっとりと説明していました。
個人的には「レナウン・ワンサカ娘」が大林宣彦作品と聞いて一番納得できました。
大林宣彦の作る映像は、女の子だけでなく、出ている人や物をとても魅力的に見せてくれます。
HOUSE
衝撃の出会いは「HOUSE」です。素人の作ったような映像とこけおどしのホラー。若い女の子のお色気映画と思うと、そんなものがふっとんでしまう衝撃の展開。
女の子が演技をしながら等身大の彼女らでいるところがすごい。
チープでキッチュな映像の数々は、今見ても衝撃的です。
怪作。「なんじゃこりゃ」が素直に出てくる感想。長男が彼女を連れてきたときに見せたら最後まで見てくれたので、「この子なら!」と思った。後で長男に「あれはない」と言われた。映像研だったくせに…
時をかける少女
原田知世の魅力が天蓋を突破した映画。
NHKの「タイムトラベラー」 がすごかったのですが、それとはまったく違った方向性で青春映画になっていました。
衝撃だったシーンはラスト近く、理科室での別れの時に、一夫が和子の頬に黒い何かを塗るシーンはものすごくエロチックでした。
もう一つ、本当の幼馴染の吾郎が、自分と和子の思い出をすべて一夫と和子の思い出に塗り替えられてしまっているのを知らないままでいることが倒錯的で、切なく感じました。
筒井康隆の原作も好きでしたが、ラストの毒はこの映画の方が上でした。筒井より毒をまき散らすこの人は…
異人たちとの夏
大林映画の中でいちばん好きな作品です。ただしクライマックスは除く。でも、クライマックスを受け入れてこそ面白いんですけどね。
風間杜夫と片岡鶴太郎、秋吉久美子の親子は少しの違和感もなくはまっていて、この3人の絡みがものすごく好きです。戻りたいところがあるとすればここかな、と。
自分の親にも、ダメだなあと思うところや許せないと思うところもありましたが、そんなものは関係ないんですね。親は確かに私を大事にしてくれていたし、私も親が一番大事でした。それは、自分が子どもを持って、一緒に育っていくうちに、心臓がつぶれるくらいにわかりました。
ところで。
クライマックスのおバカ映像は衝撃的で、こんなにいい映画なのになんてことをするんだ! と怒りに震えた記憶があります。そういえば「ねらわれた学園」でもクライマックスは超絶おバカだったなあ…
造り続ける人
大林監督、あちら側に行っても、天使だか鬼だかを集めて映画を作ってください。
私の中では、大林監督はいつでも、ずっと、私の知らないところで映画を作り続けてくれている一人なのです。
おまけ 水の旅人 侍KIDS
「クモはチョコレートの味がする」