今週のお題は「雪」ということですね。
子どものころは雪国に住んでいました。
幼稚園から高校にかけて、岐阜県奥地から新潟県魚沼地方に渡り住んでいたのですが、
どちらも冬の積雪量が2メートルから3メートルという豪雪地帯でした。
一年に何度も屋根の雪下ろしをしなければならず、
毎年その雪下ろしで何名も亡くなるというエリアでした。
雪で大変な思いをしたことも多かったはずなのですが、
記憶の中では楽しかったことばかり思い出されます。
屋根の雪下ろしも小学校の3年生くらいから手伝って、
とても楽しかったですね。
新潟の家は、冬真っ只中には2階から出入りできるレベルになり、
下ろした雪が窓ガラスを割ってしまうので、
冬に入る前に家の周りを板で覆います。
窓から1メートルくらい離れたところに柱があり、
そこに板をはめ込む溝があって、板をはめ込んでいき、
全体を覆ってしまうのです。
雪が多くなると、その家と板の間のぽっかりと空いた空間は
聖地のような静けさと清冽さをもってきます。
外の音もほとんど聞こえず、空気は冷えて冴え切っています。
あの空間はあの場所でしか経験できないものです。
もう一つ、住んでいないとなかなか経験できないものがあります。
凍み雪、堅雪という現象です。
宮沢賢治の童話に出てくる歌で、
「凍み雪かんこ、堅雪かんこ」というのがありますが、それです。
雪が降った後に晴れると、放射冷却のせいで
積もった雪の表面がカチカチに固まるのです。
朝になっても氷点下なので、10時くらいまではそのままです。
魚沼の一面の田んぼの上に積もった雪が氷になり、
上をどこまでも歩いて行けるのです。
普通の雪だと足が沈みますが、
凍っているので、舗装された道のように歩いてゆけます。
緩んでくると、雪が割れてくるので、
そうしたら帰ればよいのです。
田んぼの上は、雪がない時期は歩きにくいし、
雪の降ったあとは腰まで沈むこともありますが、
堅雪になった時ははるか遠くに見える山まで
まっすぐに歩いてゆけるのです。
スキーを履いていくと、多少雪が緩んでも沈まないので、
半日くらい歩き回ることができます。
条件が合っても堅雪にならない時もあるので、
冬の朝はいつも試してみますが、
一冬に何回か、田んぼの上も川の上もそのまま歩いて行ける日があります。
こればかりは観光で数日滞在するくらいではなかなか行き会うことのできない、
雪国に住んでいればこそ味わえる、不思議な体験です。
地面の上、1~2メートルくらいのところを歩いて行けるわけですから。